母子一体感と、離別感。

母子一体感とは?

   
私たちは、家族や、身近な人に対しては特に、
さまざまな”期待”を持ってしまいます。

「このくらいのことはわかってくれるはずだ」とか、
「私の意見に反対しないはずだ」とか、
「以前お願いしたことを覚えていてくれるはずだ」というように。   
   
しかし、実際のところ、
相手がその期待に応えてくれないことって、
日常茶飯事のごとく、よくあるものですよね。

そんなとき、

不機嫌になって黙り込んだり、
腹を立てて、相手のことを責めたり、
相手のことを変えようとして説教をしたり
するとしたら、

それすなわち、相手を思い通りに操作する目的があるために
強い甘えであると心理学では捉えます。

この甘え(=依存)のことを
「母子一体感」と言います。
  
  

母子一体感の分析

     
つまり、母子一体感とは、

「お母さんは僕(私)の欲求を
満たしてくれて当たり前」

「お母さんは僕(私)の気持ちを
わかってくれて当たり前」

「お母さんは僕(私)の期待に
応えてくれて当たり前」

という、
子どもに特有の依存心(甘え)のことなのです。
  
  

  
しかし子どもは、成長していくにつれて、

「母親が常に僕(私)の期待に応えてくれる
わけではない」
   
ということを受け容れるようになり、

やがては、健全な「離別感」を持つようになります。

離別感とは?

   
離別感とは、
   
「相手には相手の事情がある。
相手は私の思いどおりになる存在ではない」
  
「人は人。自分は自分。相手には相手の生き方や価値観があるし
自分には自分の生き方や価値観がある」

という「大人の心理」です。
   
     
しかし、実際のところ、大人になっても
   
「母子一体感」を手放すことができない人は
多いものです。

「母子一体感」を手放すことができない人は、

家族だとか身近な人が、
期待どおりの反応をしてくれないと、

不機嫌になって黙り込んだり、
腹を立てて、相手のことを責めたり、
相手のことを変えようとして説教や非難をしたり
してしまいます。

具体的な例を挙げてみましょう。

仕事から帰ってきた夫が、
「あ~、今日は暑かった。ビールが飲みたい」
と言って冷蔵庫を開けます。

ところが、
冷蔵庫の中にはビールがない。

夫は不機嫌になって、妻に問いかけます。

夫「おい、ビールはどこにあるんだ?」

妻「冷蔵庫の中に見当たらないのなら、
 ないんじゃない?」

夫「おい、なんだよ、それ!
 こんなに暑い日にビールを切らしてるって、
 どういうことだよ」

妻「あら、私はビールを飲まないから、
 ビールが切れてるかどうかまで把握してないわ」

夫「おまえなぁ、俺が仕事で疲れてるっていうのに、
 ビールも用意してないなんて、気が利かないぞ。
 専業主婦なんだから、家のことはもっとちゃんとやれよ」

妻「私なりに家のことはいろいろとやっているわ。
 専業主婦だって、やることはいろいろあるのよ。
 それに私は趣味や友達づきあいも大切にしたいから、
 あなたの欲求を完璧に満たす役なんて
 とてもじゃないけど、引き受けられないわ。
 あなたにとってビールがそんなに大事なら、
 自分でちゃんとチェックして、会社帰りに買ってくれば
 いいんじゃない?」

夫「なんだと!
 俺が仕事でどれだけストレスをためてるか
 わかってんのか!(怒)」

この例では、
夫が妻に対して強い「母子一体感(=甘え、依存心)」
を持っています。

妻の事情、欲求、価値観を無視して、

「俺の事情をわかってくれ」
「俺の欲求を満たしてくれ」
「俺の価値観を理解してくれ」
ということを一方的に要求している状態です。

具体的に言うと、夫は、

自分が仕事で頑張っていることに配慮してくれて当たり前。
自分の「ビールを飲みたい欲求」を優先してくれて当たり前。
自分の気持ちを受け容れてくれて当たり前。

といった幼児的な母子一体感を、
妻に対して持っているわけです。

つまり、この夫は、家庭において、
心理的に退行(=子どもがえり)してしまっているわけです。
  
   
コミュニケーションにおいて、双方
健全で、幸せな関係を構築するために、
   
母子一体感から抜け出し、
離別感を持つ意識を持つ事が
   
大切だと言えます。
   

「課題の分離」と「アイ・メッセージ」①

   
「離別感」を確立させるための具体的な方法として、
  
アドラー心理学の「課題の分離」を意識すると良いでしょう。
   
「課題の分離」とは、アドラー心理学の中心となる考え方で
「自分の課題(問題)と他者の課題(問題)を切り分けて考える」というものです。

例)勉強しない子どもと、勉強させたい親
  
「勉強をしない」は子どもの課題であり、
「勉強をさせたい」は親の課題である。
   
離別感を持ち考えると、まず、課題の分離をもとに
この「2つの課題を切り離し、お互いの課題には
干渉する事ができない」
と考える。

つまり「勉強をしない」のは子どもの課題である。
親がどんなに努力しようがイライラしようが、
勉強をするかしないか決めるのは子ども自身。

「子どもが勉強をしない」という課題は、親は取り組めない課題である。

一方で「勉強をさせたい」のは親の課題である。
勉強をさせたいというのは親の感情なので、
それとどう付き合うかは親自身が取り組める課題になる。

子の課題に介入しない代わりに、親は、
子を見守り、それが自分の課題だと伝え、
必要なときには支援できるようにしておくことが大切です。
    
同じように、対人関係全般についても、課題の分離は有効です。

自分の人生をどう生きるか、どう行動を起こすかは「自分の課題」であり
他の人が自分の人生をどう生きるか、どう行動を起こすかは「他者の課題」です。

   
そのように、他者との離別感を持つ事が
あらゆる対人関係の問題を解決する鍵になります。
  

「課題の分離」と「アイ・メッセージ」②

他者の価値観を変えようとすることは、
基本的にはできません。
     
従って、課題を分離しつつ、上手に離別感を保つことが
対人関係を円滑にすると述べました。
    
更に、ストレスをためないために、
私たちは「我慢をする」のではなく、
   
気持ちを上手に相手に伝える方法が必要になります。
   
その、気持ちの伝え方が
   
アイ・メッセージと呼ばれる技法です。
   
「〜しなさい」「あなたのためを思って」「〜すべきではない」
  
という伝え方は、ユー・メッセージと呼ばれ、相手の課題を侵害し、
かつ「私の思い通りにさせたい」という母子一体感になります。
   
従って、私たちにできることは「自己開示(自己主張)」のみです。
   
健全な自己開示とは、「相手の行動を良いか悪いか評価するものでなく、
私はこう思うと、自分の気持ちをオープンに表現すること」です。
  

アイ・メッセージの技法

   

   

NG例(ユー・メッセージ)

母「テレビの音がうるさい!!本が読めないじゃない!」
子「うるさいなぁ」
   
OK例(アイ・メッセージ)
   
母「あなたが大きな音でテレビを見ていると、本を読む事に集中できなくて、困ってしまうの…」
子「そっか…」

NG例(ユー・メッセージ)

上司「こんなミスをするなんて、仕事への意識が低い証拠だ!!」
部下「すみません…」

OK例(アイ・メッセージ)
   
上司「この仕事は、君ならできると思っていたから、ミスの報告を聞いて驚いてしまったよ。何かあったのかい?」
部下「実は…」

NG例(ユー・メッセージ)

彼女「遅刻してくるなんて、信じられない!最低!」
彼氏「ちょっとぐらい、いいだろ!」
   
OK例(アイ・メッセージ)

彼女「あなたが待ち合わせの時間になっても現れないから、どこかで事故にでもあったのかと思って心配で心配で、どうしようもなかったの」
彼氏「そうか、ごめんね。次は気をつけるよ」

以上のように、「アイ・メッセージ」を心がける事で、
自分自身も想いを相手に伝える事ができ、かつ、効果的に
相手との関係性を築く可能性が上昇します。
   
その一方で、相手の心に想いが届かないときもあるでしょう。
しかし、思い出していただいたいのは離別感。
   
相手が気持ちを受けとってくれるか、
受けとらないかは、相手が決めることなのです。
   
同じ様に、あなたも、相手の気持ちを受けとるか
受けとらないかは、あなたが決めることなのです。

    
そのように、相手との関係性を冷静に見つめ直し、
適切な距離感を保つことが、
   
健全なコミュニケーションと言われます。

   
   

   

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